中島みゆき詐欺③

リーフユニティの植田です。


私はすっかり信じてしまいました。

「中島氏」の電話は全て一人芸だったのでしょう。

すごい芸です。全くよどみない喋り、かつ辻褄のあった内容。
雑談までやってのけていたのですから。

それにしても軽妙な喋り、相手を信じさせるための細かい芸とツール。わざわざメモまで書いて渡してくれてるんですよ。


そりゃあ、後になって思えば不審な点も多々あって見抜けなかったこと自体は口惜しい気もします。

しかし私はお客様を疑ってかかる考えは持ち合わせておらず、そこに付け込まれたとも言えます。

また、お気づきだと思いますが直接的に詐欺となる内容はここまでのところ無いのです。
確かに大ボラは吹いていますが、ここまでのところ被害はありません。「中島氏」に収入は全くありません。工事の話も前払いで95%払うと言っているので、詐欺の気配もありません。


では、何のために・・・?



そして「中島氏」の最後の勝負が始まりました。


「いやあ、実は新幹線で財布を置き忘れてねえ。今、ここで預かってもらってんですよ。(と言って見せたメモには岡山県~と書いてあります)」


「ライターは忘れなくてよかった。これダイヤ入りで200万のものでね。(と言って光る石の付いたライターを見せる)」


「タクシーは大変だしなあ。新幹線で帰りたいんだけど6千円ほど足りないなあ。(ここは独り言のようにつぶやく)」


すっかり舞い上がってしまった私は何の疑いも無く言いました。


「あ、じゃお貸ししますから。」


中島氏「いやあ、そういう訳にもいきません。」


私「いえいえ、構いませんよ。」


中島氏「わかりました。じゃ、明日必ず返しますから。銀行の口座番号を教えといてください。明日の午後に私から連絡いれます。」


こう言って、私たちは別れました。


そう、これが私の被害額。気の毒と思い、6千円を切り上げたものをお渡ししたのです。
この時点で私の頭は超大型物件でいっぱいですから、電車賃など戻ってこなくてもいいくらいの気分です。



奈良に帰る道中、営業担当者と話しながら振り返って考えました。「ひょっとして詐欺やったんちゃうん?」と始めは冗談で言ったのですが・・・。



芸能人が見ず知らずの業者にいきなり工事を依頼するか?

わざわざ奈良の業者を選ぶ理由は?

芸能人がやすやすと連絡先だとかを教えるか?

中島みゆきは結婚していないはずなのに?(私はこの辺は興味のない分野なんですが)

電話も一方的に自分が喋っていたようだった?

あの店は携帯が非常につながりにくかったのに?

仕事で大阪に来たとしても難波で待ち合わせは不自然では?

会うや否や喫茶店に向こうが案内してくれたのも不自然では?

その他・・・。



私たちは「これは完全に詐欺や!」という結論に達しました。


商談中に見抜けなかったのは口惜しいですが、プロの詐欺テクニックには驚きでした。


「金は払ったけど、あれだけの芸を見てこの金額なら値打ちあるな(笑)」と話しながら帰ってきたのです。



そして最大の疑問。


詐欺師の収入は電車賃のみ。


たったの6千円のための大芝居だったのか?

顔をさらしてリスクを負い、携帯電話の番号まで教えている。

メモを書いて筆跡も残している。いつ警察につかまるかも知れない。
小道具やネタを用意して、手間もコストもかけている。
何よりあれだけの芸を持っている。


それで6千円?


あれで6千円なら、毎日あの詐欺をしないと食べていけない!?


普通に働くほうがいいのでは?


そう、彼は「真面目にコツコツ稼ぐ詐欺師」というわけなんです。


いやあ、世の中には面白い人がいるもんですね(笑)。
って、笑ってられるからいいんですけどね。


人生の勉強になったとともに、ブログ四回分のネタもいただき、話のネタにもなりました。


まさに貴重な経験です。


あの詐欺師、警察に捕まってもう一度笑わせてほしいですね。


来週警察に行こうかなあ―。


さて、4日にわたって書いたこの話はここで完結です。


最後までお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました(笑)。