現役ドラフト考察

現役ドラフト、という

マニアックなプロ野球ファンしか興味がないと思われるイベントが

ひっそりと行われ、結果が発表されました。



阪神からは陽川が西武へと移り、大竹という投手がソフトバンクから阪神へ入団します。


現役ドラフトの最大のポイントは各球団が二人の候補選手をリストアップする、というところです。


ここで、どういう観点で球団がその二人をリストアップするのか…が注目でした。


現役ドラフトの目的、趣旨は

出場機会に恵まれない選手が移籍することによって、より出場機会を得る事です。



しかし、球団が支配下選手の中で二人をリストアップするとなると

選手ではなく球団側の考え方になるわけです。


なので、ストレートに球団の戦力を考えるなら

一軍実績もないまま二軍でも成績が上がらないレベルの選手をリストに出せば、獲られても戦力ダウンは軽微、となります。

こうなると現役ドラフトの目的やら趣旨やらが形骸化するのでは、という危惧がありました。そのためルールの修正も必要だろう、と思われていました。


しかしフタを開けてみると…


阪神は陽川を出しました。


まさに現役ドラフトの目的、趣旨に沿ったリストアップを阪神球団はしたという事でしょう。


陽川は今年、一軍で45試合出場で .294 1本と一定の存在感を示した選手です。
過去、二軍でホームラン王を取ったというキャリアもありますし、キャリアハイで75試合48打点を上げた年もある選手です。


はっきり言って、陽川以下の実績の選手はいくらでもいます。

陽川を出す、というのは明らかな戦力ダウンなんです。


しかし、敢えて陽川を出した。


その背景には、新首脳陣の選手起用の方針が影響したと考えざるを得ません。

陽川は元々ファーストサードの内野手です。
ファーストサードは外国人が入ることも多いポジションだったため、外国人がコケたときに出場機会を得てアピールしてきました。

しかし、このところは出場機会を得るために外野手としても出場してきました。


そしてここに来て

ファースト大山、サード佐藤輝明という方針を岡田監督が打ち出しました。


陽川としては、いよいよ外野で勝負せざるを得ない状況となりました。

しかし今秋、ドラフト1位で同じ右の外野手である森下を指名。新外国人は明確に右の外野手をターゲットとして候補が絞り込まれています。

さらに外野手は今季、かなりの試合出場を果たした島田がいて、若手の井上や前川も秋季キャンプでPRしていました。

外野手本職でない陽川にとっては不利な競争となります。


それならば…


というのが今回の判断だったのでしょう。


私が球団ならば絶対に陽川は出していなかったでしょうが、結果西武が指名して移籍が決まりました。DHのあるパ・リーグには陽川のようなポジションの選手にはチャンスが多いというのもあったでしょう。


一方で他球団はどうだったか。


一定の一軍実績のある選手を出した球団

阪神   陽川 通算301試合、打率・227、23本塁打、93打点
日本ハム 古川 通算82試合、6勝15敗、3ホールド、防御率4・99
中日   笠原 通算54試合、11勝13敗、防御率4・44
楽天   オコエ 通算236試合、打率・219、9本塁打、44打点
巨人   戸根 通算158試合5勝2敗、3セーブ、18ホールド、防御率3・96
DeNA   細川 通算123試合、打率・201、6本塁打、19打点
ソフトバンク 大竹 通算35試合、10勝9敗、防御率4・07

この中でも陽川の実績は際立っていますね。


あまり一軍実績のない選手を出した球団

ヤクルト  渡辺 通算194試合、打率・169、1本塁打、6打点
広島    正随 通算21試合、打率・121、2本塁打、5打点
オリックス 大下 通算52試合、打率・207、3本塁打、11打点
西武    松岡 通算7試合、0勝0敗、防御率12・00
ロッテ   成田 通算15試合、0勝2敗、防御率5・64



一部微妙な判定の選手もいますが、こんな所でしょうか…。

もちろん一軍実績だけではなく、二軍の成績や年齢、ポジションや守備走塁、そして公表されないもう一人のリストアップされた選手たちとの兼ね合いの中での結果です。


しかしやはり、球団によってリストアップの基準、考え方は異なったことも読み取れます。


ここらへん、現役ドラフトが今後定着していけるかどうか…

ルール改正も考えないといけないでしょうね。



ともあれ

阪神に入団する事となった大竹投手。


左の先発投手という事で、一定の実績もあります。
二軍でも、それなりに抑えていたようですね。


陽川を出したのは痛いのですが、正直他の選手を見渡してみても大竹投手を獲れたならヨシとできるのではないでしょうか。


来季の先発投手はガンケル、ウィルカーソン、藤浪の穴がポッカリと空きます。
下手すれば二軍の先発ローテの頭数が足りないんじゃないか…という心配もありました。


そんな状況の中で左の先発投手が入団してくれることは、思わぬ朗報となったところです。



そういうわけで

実は密かに気を揉んでいた現役ドラフトも終わり

後は新外国人の正式な獲得発表を待つくらいとなりましたね。




こんな風に


マニアックなプロ野球ファンは、オフも静かに楽しんでおります…(笑)。